遺贈(いぞう)と相続は、どちらも亡くなった人の財産を受け取る方法ですが、性質や手続き、対象者などに違いがあります。混同されがちですが、正しく理解しておくと遺産分配の場面で役立ちます。以下、遺贈と相続の違いについてわかりやすく解説します。
■ 遺贈と相続の基本的な違い
- 相続:法律上の「相続人」が、亡くなった人の財産を自動的に受け継ぐ。
- 遺贈:遺言によって、特定の人に財産を譲ること。相続人でなくてもOK。
■ 相続の特徴
- 法律で定められた「法定相続人」(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)が対象。
- 遺言がなくても、相続人がいれば相続は発生する。
- 相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分配を決める。
- 相続放棄や限定承認などの選択肢がある(3ヶ月以内の申述)。
■ 遺贈の特徴
- 遺言によって行われる。
- 相続人以外(例:内縁の妻、知人、団体など)にも財産を渡せる。受遺者(遺贈を受ける人)は、原則「相続人ではない人」だが、相続人に対して遺贈することも可能。
- 遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」がある。
■ 包括遺贈と特定遺贈の違い
- 包括遺贈:全財産の○%、といった割合指定。
→ 相続人に近い立場となり、債務も引き継ぐ可能性がある。 - 特定遺贈:特定の財産(例:○○銀行の口座、△△市の土地)を指定。
→ 指定された財産だけを受け取れる。債務は基本的に継承しない。
■ 手続きの違い
- 相続:相続開始と同時に自動的に権利が発生(民法896条)。
- 遺贈:遺言書の存在と内容確認が必要。受遺者が「承諾」して初めて成立する。
■ 相続税の扱い
- 相続も遺贈も、どちらも原則として「相続税」の対象。
- ただし、遺贈は非相続人に贈与されるため、相続税の控除枠を使えないことが多い。
→ 相続人よりも税負担が大きくなるケースも。
■ 取り消しや放棄
- 相続人は、相続放棄(または限定承認)が可能。
- 受遺者は、遺贈を「放棄すること」ができる(家庭裁判所への申述は不要)。
- 遺言者が生前に自由に内容を変更・撤回できる。
■ どちらがよく使われる?
- 家族や親族間では「相続」が一般的。
- 相続人以外に財産を残したい場合や特定の財産を確実に渡したい場合に「遺贈」が使われる。
■ 注意点
- 遺贈はトラブルの原因になりやすい(相続人との不公平感など)。
- 相続人の「遺留分」を侵害している場合、遺贈の一部を取り戻される可能性あり。
- 正式な遺言書(公正証書遺言など)を作ると安心。
まとめ:
- 「相続」は法律上の当然の権利として財産を受け継ぐこと。
- 「遺贈」は遺言によって、誰にでも財産を贈与できる方法。
それぞれの特徴を理解し、目的に応じて使い分けることが大切です。